今日は名言、というか、あるマンガの名シーンを紹介します。結果、私は自分の仕事の尊さを確信したという自分語りです。「自分語り、うぜー」という厭世気分の方はどうぞお引き取りください。
暇すぎて一気読みした「ジョジョの奇妙な冒険」
2012年秋、南三陸に移住したはいいものの、年度が明けて2013年4月以降、高速道路の無料化も終わって県外から被災地にやってくる人たちが一気に途絶えた時期がありました。おかげでお金も仕事も十分になく、途方に暮れていた頃、時間だけはたっぷりあったので、実家の弟に頼んで「ジョジョの奇妙な冒険」を送ってもらい、一気読みすることにしたんですが(笑)、冒頭のタイトルに引用した文章を読んで、雷に打たれた衝撃を今でも憶えています。
「人間賛歌」をテーマに描かれている荒木飛呂彦さんの「ジョジョの奇妙な冒険」はぼくがもっとも好きなマンガのひとつ。なんせ「魔少年ビーティ」とか「バオー来訪者」とかリアルタイム世代ですし!(要するにオッサン)
大好きだけど難解になってジョジョ離れした過去
第一部と第二部は最高。「波紋」って、なんてスゲー必殺技を思いつくんだ!! と衝撃を受けましたよね。あと、粋なセリフがいちいち痺れる! 憧れるゥ!
一般的に人気があるのは第三部だと思うし、実際リアルタイム世代としては「あー、こりゃ人気出ちゃうよね!」という確信とともに読んでたんですけど、個人的には第四部のクローズドな「杜王町」という舞台のなかで繰り広げられるスリルとサスペンスとドラマもすごく好きです。
ラストバトルは当時超がつくほど忙しいリーマン時代だったのと、敵スタンドの概念と、ストーリーが難解で、あれは週刊で読むものじゃない、とつくづく思いましたけど。でも、あの(当時)最強の敵のスタンド能力を理解できると、鳥肌もんのラストバトルなんですよねー。
ただ、私、第5部以降はかつて、完全に挫折してまして………。主人公が「ジョルノ・ジョバーナ」とか強引すぎるやろ、みたいな感じで、ドン引きしたのを憶えています…。
第6部「ストーンオーシャン」で雷に打たれたような衝撃
繰り返しますが、2013年、時間だけはたっぷりあったので、これまで読んでなかったジョジョのシリーズを単行本で一気に読破することにしたわけです。もちろん第5部も(印象薄いけど)。
「ジョジョの奇妙な冒険」ビギナーにはつくづく、単行本での一気読みをオススメしたいですね。わからないところは何度も繰り返し読み直しながら復習で!
結果、私が過去、これまでの全シリーズ全話のなかでもっとも好きになったシーンがこちらです。空条承太郎の娘である空条徐倫(※ゴージャスアイリンとジョジョのコラボネームですよねー)が主人公の第6部。
F・Fというキャラが登場するのですが、実際には主人公・徐倫と敵対するボスキャラのスタンド能力「ホワイトスネイク」によってつくられたという設定(詳しくは読んでください)。
ちなみに、ジョジョ恒例のネーミング的にはF・Fとはファイナルファンタジーの略ではなく超有名なロックバンド「フー・ファイターズ」が元ネタです。「ホワイトスネイク」も同じく。
で、そのF・Fが敵(ボスキャラ)との戦闘中の回想シーンなんですけれど………。これが涙なくして読めなかったですね。
『F・Fが最も恐れる事………
それは自分の「知性」が消失する事であった空条徐倫と農場で出会ってからは…………
その後の事は何でも全て覚えている………刑務所の公衆電話の変なラクガキだとか
ベッドの毛布やゴミのにおい
扉の開閉の音や
トイレの音………徐倫たちと世間話をし……
足の指の形が変だといって笑った事…
全て記憶している……だが農場以前の事は……
ただ命令に従い……
理由も知らないままホワイトスネイクの「DISC」をひたすら守る………
それしか「記憶」にない……
あの場所で
何年間も「DISC」を守り
生活したはずなのに………ある記憶は
ただそれだけだ………機械のような記憶─────
生きるという事は
きっと「思い出」を作る事
なのだ………F・Fはそう悟っていた─────
それを失うこと…
それだけが怖い空条徐倫が父親のために行動し……
エルメェスとか信頼する者のために命を懸けて行動しているのは……
きっと
いい「思い出」が
彼女の中に
あるためなのだそれが
人間のエネルギー
なのだ「思い出」が細胞に勇気を
与えてくれるのは間違いない農場以前のフー・ファイターズには
なかった感覚だ今はある!
それが「知性」なのだ!
F・Fはそう悟っていた
このシーン、オリジナルコミックでは4ページにわたって描かれています。
奇しくも仙台市出身の荒木飛呂彦さんが、震災よりさかのぼること10年以上も前にこの物語を書いているということが衝撃としか言いようがありません。ちなみにこのシリーズ、1999年〜2003年に連載されていましたので、震災もへったくれもない頃の作品です。
これを読んで私は、家族写真家としての自分の仕事が本当に尊いものだ、自分のやろうとしていることは間違いない! という確信を得られました。
人間にとってもっとも尊い「想い出」をつくり、まもるための仕事は、絶対に、これからも無くならないはずだ、という。
荒木飛呂彦さんと「ジョジョの奇妙な冒険」には本当に勇気づけられますし、感謝しかありません。ぜひ「絵が苦手!」という方も「ジョジョの奇妙な冒険」を一度は手に取って読んでみていただきたいです。
深遠なテーマや哲学がたくさん描かれていて、時代を超えて語り継がれる物語です。