独立する前から「写真事務所」とは絶対に名乗らないと決めていた。 写真はあくまでも手段であって、目的ではない。
僕にとって写真撮影は、結婚する二人がいろんな困難を乗り越えていけるような想い出をカタチにすることが目的であって、キレイに撮るとか、楽しい写真を撮るとか、それよりももっと大事なことがあるはずだと(とはいえ、キレイに撮るのも楽しい写真も必要ですが)………。
冗談抜きでひがみでもなんでもなく、結婚してパーッとバラ色の人生になるわけなんてない、子どもが出来ればそりゃ幸せ全開にもなるでしょうけど、夫婦崩壊とか、家庭崩壊の危機とか、どこの家庭にも何か問題が起きて当たり前だと僕は思っている。
それを乗り越えるため、想い出、写真はきっと何か力強い味方になるんじゃないか………という中二病的発想が僕の原動力。
自分の名前をつけて写真事務所と名乗るのは簡単。でも、僕は別に自分の名前を売りたいわけじゃない。自分が有名になって、業界でひとり勝ちしたいわけでもない。構想中の「家族写真家」を世の中に増やして、家族に寄り添う人を増やしたい。
屋号にはカッコイイ名前がいいなと思っていた。光が射してくるような感じがいいなと。
たまたま新卒で入った会社で、ほぼ事実上企画倒れになってしまったが「エンライトチェーン」「エンライトシステム」という構想があった。
本部が一方的に搾取するようなフランチャイズシステムではなく、加盟店同士が意見を出し合ったり、工夫を交流しあうようなカタチで共に成長発展し、優秀な加盟店がグループの社長になる、という斬新なボランタリーチェーンで、経営方針としても大きく掲げられていた。
最終的には企画倒れで終わったが、それでも当時最先端のLotus Notesというグループウェアを全店に導入し、当時としては画期的な情報ネットワークで直営店もFC店も社員もアルバイトも関係なく、お互いに意見を述べ合ったり、相談ごとをもちかけるノリッジシステムが一部実現していた。
2000年以前の初期の楽天市場出店者向けのRMS(Rakuten Marchant System)も正直、こんなノリだった。大学4回生のときに全国の仲間とつくった、学生による学生のための就職情報交換サイト「ジョブウェブ」もそうだ。もっといえば、大学時代に夢中になっていた生協学生委員会の活動も似たようなものだ。
エンライトというのは、エンライトメントという英語をもとにした造語で、エンライトメントには「啓発する」という意味がある。
加えて語源を考えていくと、enという接頭語は「〜の中に入る」→「~の状態にする」という意味があって、直接的には「光り輝かせる」ということ。
光は、写真やムービーにとって絶対に必要なもの。
そして、震災前からも世の中がどんどん荒んでいく印象というのは強くて、なおかつ、震災後は福島の原発事故や大津波の危険性が急激に高まるなど、社会的不安が尋常ではなかった。
そんななかでも、光の射す方を探して生きていかなければ、という状況になった。 長くなりましたが、だから、屋号をEN-LIGHTENMENT(エンライトメント)という名前にしたのです。