生きるとは「思い出」をつくること

「ジョジョの奇妙な冒険」の傑作シーズンとは?

荒木飛呂彦先生が1987年に週刊少年ジャンプで連載開始した『ジョジョの奇妙な冒険』。2022年1月現在、全8部(単行本で通算131巻)で1億2千万部という発行部数。

もはや国民的マンガですが、ファンによってどのシリーズが好みかは意見が分かれるところでしょう。なんせストーリーや登場人物の必殺技(スタンド)がどんどん複雑で難解になっていく傾向があります。

ジョジョの奇妙な冒険 第1部 第1巻
ジョジョの奇妙な冒険 第2部 第1巻

私はリアルタイム世代なので第1部、第2部に強い思い入れがあります。ツェペリさんはもちろん、シーザーの話は涙なくして語れません………。ただ、一般的には、第3部が一番人気なのでしょうね。

ジョジョの奇妙な冒険 第4部 第1巻

かつては週刊少年ジャンプの連載を追いかけていましたが、第4部ではいったん挫折。

のちに単行本で一気読みして、登場人物のキャラがめちゃくちゃ立っていてラスボスとの死闘が超絶スリリングで大興奮。のちに私の雅号「丞助」の参考にさせていただいたぐらい、大ファンになりました………。

第5部からは正直、長らく敬遠していました。

………が、しかし。南三陸町に住んでいる頃、あまりにも時間を持て余していて、未読のシリーズを読むことにしたのでした。

衝撃、ストーンオーシャンから学ぶ

ジョジョの奇妙な冒険 第6部 第1巻

2021年12月からNetflixで、2022年1月からは地上波を含むテレビ放映(第1クール)が始まった第6部「ストーンオーシャン」。雷に打たれたような衝撃を受けました。そこには、フォトグラファーとして大きな学びがあったのです。

ストーンオーシャンのあらすじ

主人公は、第3部の主人公である空条承太郎の娘である空条徐倫(ジョリーン。ゴージャスアイリンとジョジョのコラボネームですねー)。シリーズ初の女性主人公です(この先見性もすごい)。

徐倫は罠にはめられて刑務所に収監され、そこで仲間たちと出会い、宿敵とのバトルを繰り広げる、というお馴染みの展開ですが………。

もっとも興味深いのは、F・F(フー・ファイターズ)という特別な設定のキャラクターが、人間の本質をあらわすメタファーとして描かれている点。

結果、私がこれまでの全シリーズのなかでもっとも好きになったシーンがこちら。

生きるという事は
きっと「思い出」を作る事
なのだ………

(中略)

「思い出」が細胞に勇気を
与えてくれるのは間違いない

農場以前のフー・ファイターズには
なかった感覚だ

今はある!

それが「知性」なのだ!

「ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン (10)」より

オリジナルの単行本では4ページにわたって描かれている、第6部中盤のクライマックスです(アニメだと第2クールの後半あたりで描かれるはず)。何度読み返しても号泣です。

知性の源泉が思い出なのだとしたら?

奇しくも仙台市出身の荒木先生が、震災よりさかのぼること(当時)10年以上も前、このシーンを描いていた事実に、私は南三陸町で読みながら震えました。

東北の三陸沿岸部で数多くの想い出の品を津波に流されながら、必死に歯を食いしばって生きている方々を目の当たりにしていたからです。

これほど、人間の知性と尊厳について深く、しかも的確に表現されたものを私は他に見たことがありません。

そして、フォトグラファーの仕事の本質は、いわば瞬間の想い出をカタチにすること。「ストーンオーシャン」から「想い出」を形にして守る仕事は尊い、と学びました。

家族のある日の思い出
猪苗代湖での思い出, 2015