14:46, 11/3/2011

発災の瞬間は名古屋にて

その瞬間、当時の勤務先である結婚式場写真室でデスクワークをしていた私はただならぬ揺れを感じた。名古屋に住んで14年だったが、かつてない揺れは阪神淡路大震災を思い起こさせた。

若いマネージャーはちょうど前撮りの撮影中で不在で、アシスタントマネージャー(といいつつ、その頃は店舗経営のほとんどを仕切っていた)の私は同僚へただちに作業を終えて外に出るよう指示した。

オフィスがあったのは築年数が私と同い年、つまり古い基準の耐震設計で6階建てマンションの1Fだったので、万が一倒壊すれば確実に死ぬからだ。

まるでお盆の上で揺れている感覚

外に出てからもしばらく揺れは続いていた。お盆の上に載せられて揺すられているような、奇妙な感覚だった。iPhone 3GSでニュースサイトをチェックしても電波が混雑しているらしく、なかなかつながらない。

次第に隣の結婚式場スタッフも外に出てきて、口々にヤバいよね、と井戸端会議になった。前撮り中のマネージャーとお客様たちもやってきて、まずは全員の無事を確認した。

とりあえずマンションが倒壊することはなさそうだ、と安心できてからオフィスに戻り、ネットをみると東北で大地震、津波という速報が入ってきた。

ブライダル業界にとって深刻だったのは現地の被災状況が不明なことはもとより、その日が金曜日ということだった。つまり、翌日には結婚式が控えている。被災したご親族やご家族がいないとも限らない。

しかし、出来ることは何もなく

翌日の準備を終えて帰宅すると、テレビでは燃えさかる気仙沼の街が映し出されていた。あの日の神戸も凄まじい光景だったがそれを遥かに上回る被害で、それが東北の太平洋側沿岸部で満遍なく起きているのかと思うと背筋が凍った。

津波が直撃した福島の原子力発電所も大騒ぎになっている。東京都内は公共交通機関が麻痺して帰宅困難者が続出との報道も盛んに繰り返されていた。

いったい、どうなるんだろうか? 私が挙式披露宴の撮影を担当するカップルは関東出身だったが、列席者は無事に辿り着けるのだろうか?

それでも、現地から遠く離れている私に出来ることは何もなかった。東北の太平洋側沿岸部と関東はそもそも結婚式を執り行えるのかどうかも怪しい。

いつもどおり、結婚式を撮影するしかない

が、なかなか寝付けなかった。

この週末にかろうじて結婚式を挙げることのできる全国のカップルとそのご列席の方々は当日、笑えるんだろうか? そんなことを思いながら、夜が更けてようやく眠りに落ちた。